商談・育成

営業電話の文字起こし方法|録音からCRM登録まで5ステップ

営業電話の内容を残すため、通話中のメモと終了後のCRM入力に追われていないでしょうか。AIによる文字起こしを使えば記録作業を減らせますが、録音方法や個人情報の扱いを決めずに始めると、精度不足や現場の不信感で定着しません。本記事では、スマホ・固定電話・クラウド電話に合う方法から、文字起こしを営業項目に整理してCRMへ登録する手順、10通話で効果を判定する基準まで解説します。

この記事の結論 4点
  • 01文字起こしの目的は全文づくりではなく、通話中のメモを減らし、CRM登録・引き継ぎ・振り返りに使える情報へ変えること。「録音→文字起こし→抽出→CRM登録→振り返り」の5工程で設計する。
  • 02録音方法は電話環境(社用スマホ/固定・PBX/クラウド電話)で決まる。精度だけでなく、自動録音・話者分離・一括管理・CRM連携・権限で選ぶ。
  • 03録音前に、録音案内・利用目的・AIへの送信範囲・保存期間・閲覧権限を決める。通話内容は個人情報になり得る。
  • 04公称精度ではなく自社10通話で判定。固有名詞・金額・日付・否定・話者分離の5項目と、修正時間・CRM登録完了時間・抽出率の3指標で採否を決める。

営業電話の文字起こしは「記録」より後工程で差がつく

営業電話をAIで文字起こしするとき、目的を「全文を作ること」に置くと失敗します。長い書き起こしが残っても、読み返されなければ意味がありません。文字起こしの価値は、通話中のメモを減らし、引き継ぎ・CRM登録・振り返りに使える情報へ変えることにあります。

背景として、日本の営業担当者が1週間のうち営業活動そのものに費やす時間は、平均で32%にとどまります(注1)。残りは移動・調べもの・記録・入力です。電話後のメモとCRM入力はこの非営業時間の一部で、ここを削れば顧客と向き合う時間が増えます。ただし、文字起こしを入れただけで成果が出るわけではありません。録音から活用までを一続きの工程として設計する必要があります。

本記事では、営業電話を次の5工程でデータに変える流れを「営業電話データ化パイプライン」と呼びます。

← 表は横にスクロールできます

工程出力担当確認点
録音通話音声担当者・電話設備録音案内と同意
文字起こし通話の全文AI固有名詞・金額・日付の精度
営業項目の抽出課題・条件・反論などAI+人推測が混じっていないか
CRM登録案件メモ・次アクション人原音との照合
振り返り改善点・良い通話人・チーム評価目的の共有

大事なのは、AIに任せるのは全文づくりと項目の抽出まで、金額や約束事項の確定は人が担うという線引きです。この順で設計すると、どの工程が詰まっているかも見えます。

自社の電話環境に合う録音・文字起こし方法を選ぶ

録音の方法は、いま使っている電話環境で決まります。手軽さだけで個人アプリを選ぶと、自動録音や一括管理ができず、定着しません。次の3環境で整理します。

← 表は横にスクロールできます

電話環境主な録音・文字起こし方式向く場面確認する点
社用スマホ録音アプリ、外付けICレコーダーまず少人数で試す自動録音の可否、保存先の管理
固定電話・PBX電話設備の録音機能と連携既存設備を活かす文字起こし連携、話者分離
クラウド電話・CTI通話録音と文字起こしの内蔵機能全社で一括管理するCRM連携、管理者権限、権限分け

選ぶときは、音声認識の精度だけで比べません。自動録音、話者分離、一括管理、CRM連携、管理者による権限設定の5点を、自社の運用で満たせるかで判断します。個人の手軽さで選ぶと、あとで全社展開のときに作り直しになります。テレアポ全体の効率化のなかでの位置づけは、テレアポをAIで効率化する方法|任せる範囲と導入手順もあわせて確認してください。

録音前に同意・利用目的・保存ルールを決める

録音を始める前に、法的な扱いと社内ルールを決めます。個人情報保護委員会のFAQによれば、通話内容から特定の個人を識別できる場合、その内容は個人情報に該当し、利用目的の通知または公表が必要です。一方で、法律上「録音しています」と必ず伝える義務まではないとされています(注2)。

ただし、法律で義務がないことと、無断録音が望ましいことは別です。顧客との信頼関係を考えれば、営業現場では冒頭に録音の案内をするのを基本にします。そのうえで、次を導入前に決めます。

  • 録音の利用目的(記録・引き継ぎ・教育など)を明確にする
  • AIに送信してよい情報の範囲を決める(個人情報・機密の扱い)
  • 音声・全文・要約で、保存期間と閲覧できる人を分ける
  • 顧客から削除を求められたときの窓口と手順を決める
  • 録音データの保存先と、アクセス権限を設定する

保存ルールは、音声(原本)・全文(作業用)・要約(共有用)で分けると管理しやすくなります。原音は限定した人だけが一定期間見られるようにし、共有はCRMの要約で行う、といった分け方です。

注意 | これは法的助言ではありません

個人情報の扱いは、業種や契約、社内規程によって判断が変わります。運用を決める際は、自社の法務・情報管理の担当者に確認してください。

営業電話をCRM登録までつなぐ5ステップ

環境とルールが決まったら、次の5ステップで進めます。いきなり全社で始めず、まず10通話で試します。

  1. STEP01

    対象業務と出力項目を決める

    どの通話(新規架電、既存フォローなど)を対象にし、CRMに何を残すかを先に決めます。

  2. STEP02

    録音案内をして10通話を録音する

    冒頭で録音を案内し、同じ条件で10通話ぶんを集めます。対象と条件をそろえるのが検証の前提です。

  3. STEP03

    文字起こしの5項目を確認・修正する

    固有名詞・金額・日付・否定表現・話者分離の5点を確認し、誤変換を直します。

  4. STEP04

    プロンプトでCRM用メモへ変換する

    全文を貼らず、営業項目に構造化します(下のプロンプト)。長い全文はCRMに残しません。

  5. STEP05

    原音と照合してCRMへ登録する

    金額・日付・確約事項は、担当者が原音と突き合わせてから登録します。

STEP4で使うプロンプトの型は次のとおりです。全文をそのまま残すのではなく、6項目に絞って出させます。

役割
あなたは法人営業の担当者です。通話の文字起こしから、CRM登録用のメモを作ってください。
入力する情報
通話の全文(話者分離済み)を貼り付ける。
出力形式
①相手・役割 ②課題 ③条件(予算・時期・要件)④反論・懸念 ⑤約束したこと ⑥次の行動、の6項目で出す。
制約
文字起こしにない情報を推測で足さない。各項目に根拠となった発言箇所を示す。不明な項目は「不明」と書く。

このプロンプトなら、AIは足りない情報を勝手に埋めず、確認すべき箇所が残ります。CRMへの入力自動化を広げる方法は、CRMのAI活用とは?入力自動化から予測まで3段階で解説で扱っています。

注意 | 金額・日付・確約は人が確定する

誤変換は金額や日付で起こりやすく、そのまま登録すると事故になります。数字と、相手への約束にあたる箇所は、必ず原音を聞いて確認してから登録します。

10通話の試験で精度と効果を判定する

ツールの公称精度は参考にとどめ、自社の通話で判定します。営業電話では、次の5項目が合っていれば実務で使えます。通話ごとに合否をつけます。

  • 固有名詞(社名・人名・製品名)が正しく変換されているか
  • 金額・数量が正確か
  • 日付・期限が正確か
  • 「できない」「不要」などの否定表現が反転していないか
  • 話者分離(自分と相手)が正しく分かれているか

そのうえで、効果は3つの指標で導入前後を比べます。文字起こしができたかではなく、CRM登録までが速く・正確になったかを見ます。

← 表は横にスクロールできます

指標見方
修正時間文字起こしを直すのにかかる1通話あたりの時間
CRM登録完了時間通話終了からCRM登録が終わるまでの時間
必須項目の抽出率6項目のうち、正しく埋まった割合

参考として、通話録音・文字起こしを使った導入事例では、通話後の記録作業(アフターコールワーク)が短縮されたことが報告されています。ただしこれらは提供企業が公表する単一企業の事例で、自社の保証値ではありません。自社では上の3指標で検証します。

1〜2分
1件あたりのアフターコールワーク短縮
※MiiTel導入事例・単一企業(注3)
5→1分
確認する録音を全体から重要箇所へ絞った
※MiiTel導入事例・単一企業(注3)
15分
20分超だったアフターコールワークの短縮後
※MiiTel導入事例・単一企業(注3)

誤変換が多いときは、原因を切り分けます。固有名詞なら用語辞書、聞き取りにくいならマイクや回線、抽出のずれならプロンプトを直します。まとめて「精度が低い」と判断せず、どこを直すかを特定します。

定着しない3つの失敗を運用で防ぐ

文字起こしは、入れても使われなくなりがちです。失敗は、データの形・確認の責任・心理的安全性の3層で起こります。

失敗1 | 全文をCRMへ貼って誰も読まない(データ形式)

長い全文を貼り付けると、後で誰も読みません。6項目の要約に変換し、全文は作業用として別に保管します。

失敗2 | 誤変換を確認せず確約として登録(確認責任)

AIの出力を鵜呑みにすると、言った・言わないの争いになります。金額・日付・約束は原音と照合してから登録する、と責任者を決めます。

失敗3 | 監視と受け取られて担当者が避ける(心理的安全性)

録音が評価や監視の道具に見えると、現場は使いません。目的(記録と育成)、閲覧できる人、フィードバックの方法を先に説明します。低評価者を探すのではなく、良い通話の共有とセルフレビューに使います。

蓄積した通話は、育成にも使えます。会話分析や改善への広げ方は商談でAIを活用する方法|要約・会話分析・改善の進め方、練習への活用は営業ロープレをAIで行う方法|評価項目と導入手順が参考になります。

SELF CHECK / 所要 約1分 文字起こしを含め、自社の営業はAIをどこから使うべきですか。

7つの質問に答えるだけで、営業部のAI活用度をA〜Cで判定。登録なしでその場で結果が見られます。

無料で診断する →

営業電話の文字起こしに関するよくある質問

iPhoneやAndroidで営業電話を文字起こしできますか?
できます。録音アプリや外付けレコーダーで録音し、文字起こしにかければ試せます。ただし、個人のスマホでの録音は保存先の管理や自動録音、CRM連携に限界があります。全社で使うなら、管理者が権限を設定できる仕組みを選びます。
電話を録音するとき、相手の同意は必要ですか?
法律上、録音していると必ず伝える義務まではないとされています。ただし通話内容は個人情報になり得るため、利用目的の通知・公表が必要です。信頼関係のため、営業では冒頭に録音を案内するのを基本にします。判断に迷う場合は自社の法務に確認してください。
無料の文字起こしツールでも営業電話に使えますか?
試すだけなら使えます。ただし無料ツールは、データの保存先や学習利用の条件、話者分離やCRM連携に制限があることが多いです。顧客情報を扱うため、会社で使うなら管理・セキュリティ・同意・精度検証を満たすものを選びます。
固有名詞や金額の誤変換を減らすにはどうすればよいですか?
用語辞書に社名・製品名を登録し、マイクや回線の品質を上げます。それでも残る誤りは、金額・日付・否定表現を人が原音と照合して直します。まず10通話で、どの項目の誤変換が多いかを把握するのが近道です。

注1:Salesforce「セールスAI業務効率化に関する調査」(2024年、日本の営業担当者が営業活動に費やす時間の割合)https://www.salesforce.com/jp/news/press-releases/2024/09/30/sales-ai-statistics-2024/

注2:個人情報保護委員会「よくある質問」(通話録音と個人情報の取り扱い)https://www.ppc.go.jp/all_faq_index/faq1-q1-10/

注3:MiiTel導入事例(アフターコールワーク短縮の事例。いずれも単一企業の事例)https://miitel.com/jp/case/2186 / https://miitel.com/jp/case/20250314/

営業AI活用度診断

まず、自社の現在地を1分で測る。

7つの質問に答えるだけで、営業部のAI活用度をA〜Cで判定します。結果は登録なしでその場に表示。詳細レポートでは「いまの強み」「優先して直すべき課題」「最初に取り組む3つの行動」までお渡しします。

所要 約1分/全7問/診断結果は登録不要

1分で営業AI活用度を診断する 全7問/無料・登録不要で結果表示