営業効率化・自動化

営業プロセス改善の進め方|ボトルネックを直す6ステップ

営業プロセスを図にしても、どの数字を直せば売上が動くのかは見えてきません。まず売上を指標に分解し(KPIツリー)、各指標の現状値から最初に直す1か所を選びます。本記事では、転換率・滞留日数・差し戻し率をまとめる改善カルテと6ステップを使い、「やめる・そろえる・任せる」の順で施策を決め、4週間で検証できる状態を目指す方法を解説します。

この記事の結論 4点
  • 01営業プロセス改善は全工程の一斉改革ではなく、売上への影響が大きい詰まりを1か所選んで直す活動。全体は描くが、手を入れるのは最初の1か所に絞る。
  • 02まず売上を指標に分解する(KPIツリー)。各指標の現状値を出し、値がすぐ言えない・低いノードを詰まりの候補にする。工程の区切りは観察できる事実でそろえる。
  • 03転換率だけでなく滞留日数と差し戻し率を改善カルテで見て、詰まりを「量不足・質不足・速度不足・定義不一致」の4タイプに分ける。
  • 04打ち手は「やめる→そろえる→任せる」の順。1ステージ・1指標・4週間で検証してから標準化する。

営業プロセス改善は「最初に直す1か所」を決める活動

「商談は増えているのに受注が伸びない」「どの工程を直せば売上が動くのか分からない」——営業プロセス改善でつまずくのは、たいてい”どこを直すか”の見極めです。営業プロセス改善とは、認知から受注までの流れを数字に分解し、そのうち売上への影響が大きい詰まり(ボトルネック)を1か所選んで直す活動です。全工程を一度に作り替える活動ではありません。

全体像は描きます。しかし手を入れるのは最初の1か所に絞ります。複数の工程を同時に変えると、どの施策が効いたのかが分からなくなり、次の判断ができなくなるからです。全体を描くが、最初に直すのは1か所という原則が、改善を続けられるかどうかを分けます。

見直しに着手すること自体は難しくありません。中小企業を対象にした調査では、業務の見直しを「部門単位」で実施した企業が一定の割合を占め、「特段の見直しを行っていない」企業はごく一部にとどまります。効果を出している企業も多く、問題は着手の有無より、どこをどう直すかの設計にあります(注1)。

26.7%
業務の見直しを「部門単位」で実施した中小企業の割合
※中小企業白書2018年版(注1)
13.8%
「特段、業務の見直しは行っていない」と答えた割合
※中小企業白書2018年版(注1)
50%超
業務見直しで効果を得た企業(全業種で半数以上)
※中小企業白書2018年版(注1)

本記事では、売上を指標に分解し(KPIツリー)、各指標の現状値から最初に直す1か所を選ぶ方法を解説します。転換率・滞留日数・差し戻し率をまとめる改善カルテと6ステップを使い、「やめる・そろえる・任せる」の順で施策を決め、4週間で検証できる状態を目指します。

売上を指標に分解し、弱い数字を1つ見つける

直す場所は、勘や印象で選びません。売上を指標の掛け算・足し算に分解し、各指標の現状値を並べれば、どこが詰まっているかは数字で見えてきます。まず、売上がどんな指標でできているかを1枚に分解します(下図)。

売上分解KPIツリー:粗利益=売上-原価から、新規顧客・既存顧客の売上と原価を指標に分解した図
売上分解KPIツリー(クリックすると拡大します)
売上分解KPIツリー(拡大表示)

読み方は3つです。掛け算(×)の枝は、どれか1つを1.2倍にすれば上位の数字も1.2倍になります。足し算(+)の枝は、率ではなく量そのものを増やす打ち手が効きます。そして現状値がすぐに言えないノードは、計測の穴です。多くの場合、その「数字が出せない工程」こそ最初に塞ぐべきボトルネックになります。

次に、分解した指標を正しく測るために、工程の区切り(ステージ)をそろえます。「リスト作成→架電→訪問」のような社内の作業で区切るのではなく、顧客の状態が変わる節目で区切り、入口・出口を観察できる事実で定義します。「担当者が乗り気」といった主観ではなく、「予算と決裁者を確認できた」のように、誰が見ても同じ判定になる条件にすると、指標の数字が信用できるものになります。

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ステージ顧客の状態出口条件(観察できる事実)
認知課題を意識し情報を集め始めた資料請求・問い合わせがあった
商談課題と要件を自社に共有した予算・決裁者・時期を確認できた
提案解決策を比較検討している見積を提示し検討の返答を得た
合意社内で導入を承認しつつある条件面で合意し稟議に入った
受注契約を締結した発注書・契約書を受領した
注意 | 無理に1本化しない

商材やチャネルが複数あるなら、無理に1本のプロセスへまとめないでください。新規と既存深耕、直販と代理店経由では、顧客の行動も詰まる場所も違います。まずは1つの主力商材・主力チャネルで描き、そこで改善の型を作ってから広げます。

指標の数字が実態とずれていないかも点検します。社内では「提案」に進んでいるのに、顧客側はまだ課題を整理している段階なら、そのステージ定義がずれ、転換率などの数字も当てになりません。

改善カルテで詰まりを4タイプに分ける

ボトルネックを転換率だけで探すと、見落としが出ます。転換率は「通過した割合」しか示さないため、長く滞留している案件や、前工程へ戻された案件が数字に表れにくいからです。各ステージを1枚にまとめる営業プロセス改善カルテで、複数の指標を並べて見ます。

カルテには、ステージごとに次を記入します。

入口条件・出口条件
そのステージに入る/出る判定基準
顧客・担当者の行動
各段階で実際に起きていること
転換率
次のステージへ進んだ割合
滞留日数
そのステージに留まっている平均日数
差し戻し率
前のステージへ戻された割合
データ取得可否
その指標を今の記録から出せるか

これらを並べると、詰まりを次の4タイプに分けられます。症状(転換率が低い)と原因(なぜ低いか)を混同しないための分類です。

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タイプ現れ方主な原因
量不足そのステージに入る案件数が少ない前工程の供給が足りない
質不足転換率が低く差し戻しが多い入口条件を満たさず進めている
速度不足転換はするが滞留日数が長い承認や資料作成で待ちが発生
定義不一致担当者ごとに判定がばらつくステージの条件が曖昧

タイプが分かれば打ち手が変わります。量不足に研修をしても効きませんし、定義不一致にツールを入れても揃いません。指標の見方は営業分析とは?見るべき指標とAIで改善する5ステップも参考になります。

営業プロセスを改善する6ステップ

改善カルテで詰まりを特定したら、次の6ステップで1か所ずつ直します。

  1. STEP01

    売上を指標に分解する

    KPIツリーで売上を指標の掛け算・足し算に分解し、測る対象の一覧を作ります。動かしたい最終指標(売上・受注)は、分解の頂点に置きます。

  2. STEP02

    現状データを集める

    直近の案件を同じステージ定義で並べ、転換率・滞留日数・差し戻し率を出します。失注理由も確認します。

  3. STEP03

    カルテで可視化する

    各ステージの指標をカルテに記入し、現場ヒアリングで数字の背景を補います。

  4. STEP04

    ボトルネックを1つ選ぶ

    売上への影響が最も大きい詰まりを1か所選び、4タイプのどれかを判定します。

  5. STEP05

    改善案と責任者を決める

    タイプに合った打ち手を1つ決め、実行と測定の責任者を明確にします。

  6. STEP06

    4週間で測定し判断する

    1ステージ・1指標・4週間で効果を測り、標準化・修正・中止を決めます。

このサイクルは1ステージ・1指標・4週間に限定します。範囲を狭めるほど、効果と原因の因果がはっきりします。1回で終えず、詰まりを1か所直したら次のボトルネックへ同じ手順を回します。

改善策は「やめる・そろえる・任せる」の順で選ぶ

打ち手を決めるとき、いきなりツールやAIから入ると失敗します。不要な作業を残したまま自動化すれば、ムダを速く回すだけになるからです。施策はやめる→そろえる→任せるの順で判断します。

  1. STEP01

    やめる

    成果に結びつかない報告、重複入力、使われない資料を廃止します。作業そのものを減らすのが最初です。

  2. STEP02

    そろえる

    残す作業のステージ定義、入力項目、提案資料を標準化します。誰がやっても同じ品質になる状態にします。

  3. STEP03

    任せる

    標準化できた作業を、SFA・CRMやAIに任せます。ここで初めてツールを検討します。

AIに任せるのは、商談要約、入力補助、案件差分の抽出、失注パターンの分析などです。価格判断や顧客との合意といった、責任を伴う意思決定は人が担います。自動化には限界もありますが、現在の技術で自動化できる余地は営業・営業オペレーション業務の3分の1超と推計されており(注2)、標準化した定型作業ほど任せやすくなります。作業を減らす具体策は営業効率化の方法|AIで自動化する業務と進め方、SFAの導入判断はSFAツールとは?機能と導入判断を3つの業務で解説で詳しく扱っています。

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営業プロセス改善が定着しない5つの失敗

改善が続かないとき、原因は設計・測定・運用のどこかにあります。どの段階でつまずいたかを切り分けると、直し方が見えます。

設計 | ステージ定義が曖昧

判定基準が人によって違うと、指標そのものが信用できません。出口条件を観察できる事実でそろえます。

運用 | 入力項目が多い

入力負担が重いと記録が滞り、データが欠けます。改善に必要な項目だけに絞ります。

測定 | 複数施策を同時に変える

一度に変えると、どれが効いたか判断できません。1ステージ・1指標に絞ります。

測定 | 売上だけで判定する

受注は外部要因にも左右されます。転換率・滞留日数・差し戻し率で工程の変化を見ます。

設計 | トップ営業の手順をそのまま標準化する

属人的な勘は再現できません。誰でも実行できる手順に翻訳してから配ります。

これらを踏まえた改善の回し方は、営業マネジメントのAI活用|会議・案件管理・育成を改善や、全社の進め方をまとめた営業DXとは?進め方とAI活用を90日計画で解説もあわせて確認してください。

よくある質問

営業プロセス改善はどの工程から始めるべきですか?
売上への影響が最も大きいボトルネックから始めます。全工程を同時に変えず、改善カルテで詰まりを1か所特定し、そのステージだけを4週間で検証します。影響の小さい工程から手を付けると、成果が見えず続きません。
営業プロセスのボトルネック特定に必要なデータは何ですか?
各ステージの転換率、滞留日数、差し戻し率の3つが基本です。加えて失注理由と、ステージごとの案件数があれば十分です。高度な分析ツールは不要で、直近の案件を同じステージ定義で並べれば集計できます。
SFAやCRMがなくても営業プロセスは改善できますか?
できます。ステージ定義をそろえ、表計算ソフトで案件を並べれば、転換率や滞留日数は出せます。SFAは記録と集計を効率化する道具で、なくても現状把握と改善は始められます。標準化ができてから導入すると定着します。
営業プロセスはどのくらいの頻度で見直すべきですか?
4週間の改善実験ごとに指標を確認し、四半期に一度は全体のカルテを見直します。加えて、商材の追加、組織変更、主要チャネルの変化があったときは、その都度ステージ定義がずれていないか点検します。

注1:中小企業庁「中小企業白書2018年版」(第2部第2章 業務の見直し)https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H30/h30/html/b2_2_1_0.html / https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H30/h30/html/b2_2_2_0.html

注2:McKinsey & Company「Sales automation: The key to boosting revenue and reducing costs」https://www.mckinsey.com/capabilities/growth-marketing-and-sales/our-insights/sales-automation-the-key-to-boosting-revenue-and-reducing-costs

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